2015.10.27
土地企画

それでも人生にイエスと言う!!

 皆さん、こんにちは。

私は、興味があって志教育を世界に広げようという活動をやっておられる出口 光さんのメールマガジンを拝見しています。
皆さんにも一度ご紹介したくある日のその内容をここにご紹介します。

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「それでも人生にイエスと言う」というフレーズを知っていますか?
フランス革命のときに、戦火の中で口づさまれた言葉です。
この言葉を、ナチスドイツ人のユダヤ人強制収容所から奇跡的に生還した心理学者ビクター・フランクルの本で知りました。 

ある夜、仕事で遅くなり渋谷からタクシーを拾いました。
「〇〇まで行ってください。」
そして、そこまでの道順を運転手さんに告げました。
「お客さん、それよりも〇〇通りに入った方が、距離が短いですよ。」
「あ、そう。じゃあ、そうして。」
「私はタクシーを初めて1ヶ月なんですよ。でもなかなか良い運転手になれない。お客さんの言うとおりにしたら距離が稼げるのに、それでは高くなってしまうと思って、いつも余計な事を言っちゃうんですよ。」
「その方がずっと良い運転手だよ!!」
私はそんな運転手さんの過去に興味を持ちました。
「タクシーの仕事やる前は、なにやっていたのですか?」
「私は、本当は左官屋なんですよ。この年になるまで、ずっと日本家屋やお寺の壁を塗ってきたんだ。でも仕事をくれる工務店が2つ潰れてしまい、ほとんど仕事がなくなったので、運転手を始めました。ときどき左官の仕事が入れば、タクシーの合間にするんです。」
「壁が一人前に塗れるようになるまでに何年くらいかかるのですか?」
「お客さん、京壁を塗れるようになるには最低でも5年はかかるね。こての返し方が難しいんだよ。こての返しが同じ方向を向いていないと、太陽光線の関係でそこだけ色が変わるんだ。」
「職人さんはすごいなあ。その道一筋だもんね。」
「もう本当の壁を塗れる職人さんは少なくなってきたよ。ハウスメーカーの家はこの不況下でもたくさん建つけど、和式の家を建てる人は本当に少なくて、仕事が全然無い。私の仲間も廃業を考えていますよ。」
「そうか。日本はもともと職人文化だよね。教育方法も違うし、日本の良さが残っていますよね。これが無くなるのは嫌だよ。」
私たちは話に夢中になっていました。
彼は日当や材料費、工務店との関係など、いろんなことを教えてくれた。
気がついたらもう自宅の前に来ていた。
「お客さん、私は今はタクシーしてるけど、職人は絶対辞めないからね。がんばりますよ。」
そう言うと、彼はお釣りを渡すために私の方を振り返りました。
薄暗いタクシーの中で対面した。
その人は、顔の痩せた初老の方でした。
少し疲れた表情の中で、目がキラリと光った。
胸が熱くなった。
『それでも人生にイエスと言う!!』というフレーズが浮かんできた。

  

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以上です。ありがとうございました。

鷲見 嘉博